境港紀行

前回ひさびさに店の告知をしてみたのも束の間、あいかわらず商売っ気のないことを書いてみますが。

10月27日、鳥取県は境港市に行ってまいりました。

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深夜に岡山を出発して、早朝に到着。おはよう日本海!

3年連続6回目の訪問となる境港。親戚も友人もいない土地で、向かう先はもちろんJR境港駅の前から商店街へ続く例の……。
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“御大”こと水木しげるセンセイと鬼太郎ねずみ男のブロンズ像が駅の真横に鎮座する、妖怪愛好者の聖地・水木しげるロードであります。

到着したのは朝の7時半過ぎ。
もちろん開いている店もないので、人通りの少ないロード周辺をのんびりと散策。

まずはツイッターでやりとりさせていただいている妖怪好きの方から教わったスポットへ。
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“おたねさん”の祠

おたねさんはこの地域に話の伝わる狐の名前。
女の人に化けるのが得意で、善人は騙さずに、悪人だけを懲らしめたのだそうですよ。
この祠、境港駅から南方向、線路沿いにほんの数分歩いたところ、踏み切りのすぐ傍に祀られています。

お参りをすませると水木ロードに引き返してさらにブラブラ。

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・・・とまあ、道の両脇にたくさん並んでいるブロンズ像(現在153体)がメインの水木ロードではありますが、気を付けて歩くと他にも面白い発見がたくさんあります。

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(左)お手洗いの標識が鬼太郎・猫娘・目玉の親父
(右)テントの脚を固定するためにくくりつけられた土嚢が、鬼太郎のちゃんちゃんこ柄。

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別のお店でも、ノボリを立てる台がちゃんちゃんこ柄。

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(左)ペットの粗相おことわり。
(右)鬼太郎の「わりとよく見かける決めポーズ」

深夜から車を運転して、到着するなり歩き回ったことで不意に眠気に襲われた店主は、ここでいったん小休止。車中で仮眠をとります^^;

*  *  *
小一時間ばかり休憩した後、向かったのはメインストリートから脇道に逸れた場所にあるコチラ。↓↓

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一月と六月」という名前のこのお店は、本と衣料、雑貨のセレクトショップ。書籍は新刊も古書も取り扱っているのですが、そのラインナップが素晴らしい!

棚を眺めてしばし検討した末、2冊購入。
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『きのこ文学名作選』(編:飯沢耕太郎 港の人刊)は文字通り“きのこ”が登場する文学作品を集めたアンソロジー。2010年に限定3000部で刊行され、祖父江慎+吉岡秀典による懲りに凝った装幀・造本も話題となった1冊です。
刊行当時、購入しようかどうか迷っているうちに売り切れになってしまった因縁の本を、まさかの新刊で発見。肩がビクン、と跳ね上がりました。
先々月、刊行されたばかりの姉妹編『胞子文学名作選』(編:田中美穂 港の人)を購入したところだったのですが、このタイミングでこの出会い、本が本を呼んだのかもしれませんね。

もう1冊は『旅の仲間 澁澤龍彦 堀内誠一往復書簡』(編:巖谷國士 晶文社刊)。澁澤龍彦は幻想・綺想の文学・美術・文化史などを嗜む人間なら説明するまでもない大家。
“堀内誠一”という名前を絵本作家、あるいは「アンアン」「ブルータス」のロゴを作ったグラフィックデザイナー、という方面で知っている方にとっては、澁澤との交流が意外なものに感じられるかもしれませんが、澁澤が創刊したアングラ色の強い雑誌『血と薔薇』の編集に堀内も携わっており、二人の親交はその頃から続いていたわけです。
全てカラー写真で紹介される自筆の手紙には、両者の嗜好や、交友関係をうかがわせる記述があちこちに見られ、興味はつきないわけですが、恥ずかしながらこんな本が出ていることを、今回初めて知った次第。
チビチビと味わいながら読む楽しみができました。

他にも欲しい本が何冊もあったのですが、フトコロの事情もあるので断念……。

ちなみにワタクシが訪れた前日、このお店には『平凡パンチ』の表紙絵でおなじみ、イラストレーターの大橋歩さんがいらっしゃったそうで…。
こちらは「嬉しい偶然の出会い」というわけにはいかず、ニアミスでありました……。

※場所柄、誤解なきようお断りしておきますが、妖怪関連書籍のお店というわけではありません。アシカラズ。

*  *  *
良い買物ができてホクホクしながらお店を出たのは正午前。
どこかで昼食を……と言いたいところですが。

今回の旅、ここからが本来の目的なわけで。

向かった先は境港商工会議所。
境港妖怪検定の試験会場であります。
(※写真はナイのです。)

すでに妖怪検定中級を取得している斑猫軒店主が受験するのは上級。3回目です……。
過去の合格率11.1%という難関。

とはいえ、本当のところを言えば今回はあまり合否にこだわるつもりもないので。
なにしろ古書店主として独立して1年目。
去年の試験を受けた際には「(経済的にも時間的にも)来年以降、しばらくは旅行どころではないかもしれない」と思って山陰を後にしたものでしたが、お客さまや周囲の皆さまにお引き立ていただいたおかげで、またこうしてココにいる…もうそれだけで感無量だったわけです。

試験の内容はというと例年どおり「120分1200字の論文形式」。
テーマは
・水木しげるの作品世界に、境港および周辺地域の風土が与えたものを説明せよ。
・「妖怪とは何か」について、外国人に説明するつもりで解説せよ。

の2題から1つを選択します。

ちなみに初級は水木しげるロードのガイドブックでもある『水木しげるロードの妖怪たちⅥ』、中級は『図説 日本妖怪大全』(講談社文庫)が公式テキストになっていて、暗記系の勉強が必要なのですが、上級になると普段得た知識をもとに書くだけなので、特別な勉強というのはありません。
あえて挙げるなら2時間1200字で文章を書く練習くらいでしょうか。

この「1200字」という感覚、ワタクシにはなかなか掴めなくていつも泣かされます。(今書いているこの記事もここまでで既に2000字を超えています…)
1200字というのは、たとえば本をパッと開いて右のページを読む、左のページを読む、それだけでオーバーしてしまう分量。

つらつらと書いているうちに字数オーバーしそうなことに気付き、消しては書きを繰り返していたらタイムアップ――というパターンで、発表を待つまでもなく不合格が決まっていたのが過去2回の試験。

今回はその反省をふまえて、どうにか終了2分前に最後まで書き上げることができました。
合否はさておき、心地良い達成感。

さらに試験終了後、ネットでのみ交流してきた妖怪好きの方と初めて直接お話させていただき、たいへん嬉しい気持ちで帰途に着いたのでした。

不合格になりたいわけではないのですが、また来年も行けたら良いな、と思える日帰りの旅でありました。

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