昭和一ケタ少女の“お作法”

昨日サイトに登録しながら興味深く眺めた一冊がこちら。

少女倶楽部昭和六年五月號附録 『禮法 作法 少女大寫眞帖』14.8×19.8 折本38頁 経年イタミ、時代シミ 折り目少キレ 裏表紙上部の糊付け少剥がれ
a093
中のページを屏風のようにパタパタと畳む、「折本」とよばれるタイプ。
a096

少女雑誌の附録、しかも内容は礼儀作法、とくれば興味のない方がほとんどだろうと思います。
けれども、戦前の雑誌には本当に丁寧に作られているものが多く、また当時の文化・価値観・美意識などがギュッと詰め込まれているという意味でも、この一冊をご紹介する価値はあると思った次第です。

その内容ですが、表側のページでは「外出前」「訪問」「自動車の乗り降り」などシチュエーションごとの立ち居振る舞いを写真つきで解説しています。
a095

載せられている写真はモノクロ写真に人の手で色を塗った「彩色写真」と呼ばれるもの。戦前の絵葉書などでもよく見かける技法ですが、この本の写真は着物の柄などがじつに綺麗に描かれています。
さらによく見れば、アール・ヌーヴォーを意識したとおぼしき縁飾りも、ページごとにデザインを変えているなどの小さなこだわり。
a097

昭和初期の奥床しさを感じるデザインに対して、文章のほうも味わい深さでは負けていません。
a094
こちらは「手藝のいそしみ」と題して、“模範的昭和一ケタ少女の余暇の過ごし方”を提案するページ。
そこには次のようなキャプションが付いています。

勉強、運動、お手伝、其のひま/\には一寸(ちょっと)の時をも惜しんで、努めて好きな手芸にいそしみませう。美しく仕上げて「お母様御覧下さいませ」などと母上のもとへ走り行く嬉しさ。よしはじめは上手に出来なくともたゆまず励めば遂には大きな物を仕遂げるのも困難ではありません。考へれば時を浪費するのは実に勿体ない事です。(原文は旧字)

“「お母様御覧下さいませ」などと母上のもとへ走り行く嬉しさ” “よしはじめは上手にできなくとも…”の辺りに何とも言えない、古き良き時代の趣が漂っていると思いませんか?

いつもダラダラと長い記事になってしまうので、今回は文章を短くしてみたのですが、画像が多くて結局縦長に…。どうも難しいものですねえ。
この本、裏側ページはまた趣向が変わって、昭和初期らしいイラストがたくさん使われているのですが、それはまた後日ご紹介できればと存じます。

といったところで、今日はこれにてお暇(いとま)いたします。さやうなら。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA