建築の進歩と調和―『EXPO’70の建築 パビリオン・基幹施設の計画と工法』―

少し前に入荷して、すでに商品として登録もしている本ですが、商品ページの情報だけでは面白さが伝わりにくい品かと思いますし、内容がよく分からないまま「ちょっと試しに」といった買い方をする類の本でもありませんので、今さらながらご紹介いたします。


『EXPO ‘70の建築 パビリオン・基幹施設の計画と工法』(工業調査会 昭和45年)

斬新な意匠のパビリオン群、屹立する「太陽の塔」……。
1970年に大阪で開催された万国博覧会といえば、高度成長期の日本を象徴するイベントの一つ。
その様子は、実際に会場に訪れた方々はもとより、当時を知らない世代の人でも、写真や映像などで目にする機会があるかと思います。

とはいえ、それはあくまで華やかな、表に出ている姿。
無論、一種のお祭りですから、裏側の様子を覗き見するような野暮はせずともよいのですが、野暮は承知で作り手の視点に接してみたいという好奇心もまた、正直なところで。

本書は万博を彩ったおもなパビリオン、施設について、設計、構造、材料、施工などの概要を記録。
それぞれの特徴的な部位や構造、先進的な技術が取り入れられた機構などについても詳しく述べられています。
要するに華々しいお祭りの会場を作り上げた、裏方さんの仕事が記録されているわけです。

非常に分量の多い、そして中身の詰まった一冊ですが、とりあえずその一部を思いつくまま。
(順番は本書の収録順通りではありませんので、あしからず)


最初はやはり、万博の建造物の中で一番有名であろう「太陽の塔」から。

DSC_0402 DSC_0406

その「太陽の塔」を含めた基幹施設「お祭り広場」の平面図と施工風景。

DSC_0404 DSC_0415

「太陽の塔」内部にある「生命の樹」のイメージ図と組立図、および検査の様子。

ところで、写真を見て分かる通り、またすでにご存知の方はご存知の通り、万博会期中の「太陽の塔」はお祭り広場の大屋根から突き抜ける格好で立っていたわけですが。
丹下健三デザインのこの大屋根の建造も、たいへん大がかりな工事だったようで……。

DSC_0405 DSC_0323

地上で組み上げてから30メートルの高さまでリフトアップする作業。加えて、部材を接続するボールジョイントの図解も。

もちろん、これらの基幹施設だけでなく、さまざまな国や都市、企業が技術を尽くしたパビリオンについての資料もぎっしり。

DSC_0416 DSC_0409 DSC_0408

空気膜構造の天井をもつアメリカ館。
解説には「アメリカ館の面白さというのは、〈略〉中に入った人は、全然影のない非常に不思議な空間に気がつくということである。」「また夜は、その膜の裏側に強力な照明をつけて、これが膜を通して外へでる。それでドーム全体が夜空にポッカリ浮き上がって、その建物一つが大きな見せ場になるというようなことも計算してつくられている。」とあります。
ちなみに同じく空気膜の天井を採用した東京ドームが開場したのは万博の18年後、1988年のこと。

DSC_0410 DSC_0413 DSC_0417

最高部分の高さ109メートル、ソ連館。
「……観客は、天井の比較的低い展示場から、思いがけず、まっしぐらに天をつく100mの高さをもつホールに出る。〈略〉高さ40mに達する菱形の超大多重スクリーンには、15の映像が同時に映写され、それが見る人にとっては一つの形象にとけ合う。以上の展示は全体が、単一のプランにしたがって構想され、演出された大きなスペクタクルである。」

DSC_0422 DSC_0423

せんい館。
「建物全体は“せんい”のもつ特徴的な線――すなわち、懸垂曲線で印象づけた単純なフォルムより内部機構上必要な空間の素肌にそって外皮をかけ、それを建物の素顔としてさらけ出した複雑な形状をしたドーム部が突出した形という、単純に対する複雑の対比相乗の面白さをねらった。
 さらに、パビリオンと大衆との対話をより密着化させるために、ドームのまわりに建築工事用の足場を組み、作業服姿の人形が何体か取り付いた。いわば建築途上の一時点を凍結させた状態を表現した。
 通常の建築物は、工事途中の見苦しさ、工事に費やしているたくましいエネルギーをすべて包め、ぬぐいかくして、初めて完成された姿として披露するものであるが、完成へとあと一歩の最後のエネルギーを結集している姿の中にも、本当に力強い力強い芸術的な美しさを見出されるし、その美しさ・力強さをあえて披露することにより、見る人と、このパビリオンとの心のふれ合いがより密着化するのではないだろうか。」

DSC_0432DSC_0424 DSC_0425

古河パビリオン。
「古河パビリオンは〈略〉「古代の夢と現代の夢」を構想として企画され、約1200年前、天平文化のシンボルであった東大寺創建当時の七重の塔を、再現するものである。塔の高さ85mは現存する一番高い京都東寺の五重の塔(50m)をも凌ぐものであり、その昔、木材と瓦によって10数年の年月をかけ造営された姿が、鉄とプラスチックを主材料としてではあるが、約1年間で再現されるのである。」

などなど……、挙げていけばキリがありませんが、ざっとこんな具合。

内容としては専門的な箇所もあり、建築の勉強をしたことのないワタクシには分からないところも多々あります。
とはいえ、設計のコンセプト、施工の際の課題と解決といった部分は素人目にも興味深い内容ですし、個性的な建築のための平面図・構造図、豊富な資料写真などを眺めるだけでも面白い。

もちろん、建築の知識のある方ならもっと楽しめるのでしょうね。正直なところ、少しうらやましくもあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA