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泉鏡花『新泉奇談』をめぐる議論の経緯(4・終)

【前回まで】
真作か偽作か……諸々の疑問が残ったまま、さまざまな関係者の筆跡鑑定を根拠にして刊行に漕ぎつけた泉鏡花の未発表小説『新泉奇談』。
当然予想された読者・識者からの異議に対しては、原稿発見から10数年に渡る経緯と、筆跡鑑定の信憑性を記すことで回答に代えてきた村松定孝ら真作説派の面々ですが、じつは彼らは最大の難問を棚上げしていたのでした。

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新泉奇談 泉鏡花 千部限定版 角川書店
昭和30年初版 四六判 P290 函ヤケ、天イタミ、時代シミ 元パラ上部少イタミ、袖折れ跡
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泉鏡花『新泉奇談』をめぐる議論の経緯(3)

【前回まで】
版元である京都和敬書店の経営不振によって長く頓挫したままとなっていた泉鏡花の未発表小説『新泉奇談』。
若き国文学者、村松定孝がこれを世に紹介したのをきっかけに事態は好転、ついに角川書店から出版される運びとなったのですが。

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新泉奇談 泉鏡花 千部限定版 角川書店
昭和30年初版 四六判 P290 函ヤケ、天イタミ、時代シミ 元パラ上部少イタミ、袖折れ跡
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泉鏡花『新泉奇談』をめぐる議論の経緯(2)

【前回まで】
泉鏡花の没後数年を経て発見された未発表小説『新泉奇談』の原稿。
生前の鏡花を知る文学者たちの見立てでは、筆跡も文体もたしかに鏡花自身のものでした。
前後の状況にいくらか不審な点があるのを気にしつつも、結局原稿は真作と判断され、京都和敬書店から出版される運びとなったのですが…。

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新泉奇談 泉鏡花 千部限定版 角川書店
昭和30年初版 四六判 P290 函ヤケ、天イタミ、時代シミ 元パラ上部少イタミ、袖折れ跡
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泉鏡花『新泉奇談』をめぐる議論の経緯(1)

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新泉奇談 泉鏡花 千部限定版 角川書店
昭和30年初版 四六判 P290 函ヤケ、天イタミ、時代シミ 元パラ上部少イタミ、袖折れ跡

作家の生前には世に知られることなく、没後に原稿が発見された作品――。
こういうとき、当然出てきてしかるべきなのが、その真贋をめぐる葛藤や議論。
百家争鳴といいますか、一家言持つ人たちの声々姦しく、かえって真相はますます藪の中に……、というのは、関係者や読者の思い入れが強い作家であるほど起こりがちな事態なのかもしれません。
たとえば泉鏡花の生前未発表小説『新泉奇談』が発見された際の状況がまさにそのようなもので……。
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