(続)昭和一ケタ少女の“お作法” 

先日、表側のページだけをご紹介した少女倶楽部昭和六年五月號附録 『禮法 作法 少女大寫眞帖』の裏側です。
あまり長引かせて過剰なご期待をさせてしまうのも申し訳ないので、あくまでサラリと……。

表側が写真を使っていたのに対し、こちらはイラストで「正しい服装」「洋食の作法」「電車でのマナー」などを説明しています。
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このイラストがまた昭和レトロといった風情で良いのです。

時代を感じる、という意味で紹介するなら、やはりこの記事でしょうか。
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軍隊やその他の行列に出逢つた場合には、みだりにそれを横ぎつてはなりません。

ちょっと興味深かったのは、化粧の仕方まで紹介しているという点。
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曰く、
少女には、自然のまゝの美しさがありますから、殊更お化粧の必要はないのですが、上等の衣類を着けて他へでかけるといふやうな時、お家の方から勧められることもありますから、さふいふ時は、あまり目立たないやうに、あつさりとするのがよいのです。
とのこと。
普段は必要でなくとも、いざというときのための“たしなみ”として知っておくのですね。
「子供は知らなくてよろしい」の一言で片付けたりしない辺り、考えてみれば少女と呼ばれる年頃の読者にきちんとした礼儀作法を求めるということは、少女といえども一人前に扱う、ということの表れなのかもしれません。

さて、まだまだ紹介したい箇所はありますが、長々と書けばキリがなくなります。最後にご紹介いたしますのは裏側全ページの上段にある「絵解き作法歌」。
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右:「取次が名刺つく/\゛見つめるは 礼にあらざることゝ知るべし
左:「案内は斜左に先に立ち 室(へや)を開いて客を招ぜよ

諸々の作法を絵で示しながら、三十一文字の歌を添えるという趣向には時代を感じつつも、これがまたよく出来ていて、つい読み込んでしまうのです。
食物を盛りたるものを持つ時は 息のかゝらぬ程にさゝげよ
蓋取らば左は左右は右 いつも片手を添ふるものなり
茶は客の右膝前に菓子中に 火鉢左に置くと知るべし
などなど、全部で三十首。

中にはちょっとおかしみのある、こんなものも混じっています。
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「立ち聞きや隙見さゝやき話など いやしきものゝしわざなりけり」
「我ながら醜きものと知らざるか 頭かく人 鼻いぢる人」

じつに「いやしきもの」「醜きもの」らしさの伝わる絵……。
しかしながら、一しきり可笑しがった後で、もしや自分も…と省みればいくらか冷や汗の出るような心辺りも。
言ったそばから頭を掻いて恥じ入りたいような次第ですが、とにもかくにも戦前レトロ本の魅力、少しでもお伝えできていれば幸いです。

今後、戦前本も少しずつサイトに登録してまいりますので、ご興味のある方はどうぞご覧くださいませ。
かつて“昭和ひとケタ少女”だった方からの買取も大歓迎いたします。是非お気軽にお問い合わせください。

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